劣化例:作品の黄変(酸性紙化)とカビ発生のマットボード テープの酸化
劣化例:作品の黄変(酸性紙化)とカビ発生のマットボード テープの酸化

安全な紙の評価と寿命

「安全な紙」とは少し抽象的です。門外漢なりに解釈すれば、用途にふさわしい耐性や適性を比較的長く維持しうる紙、という意味だと理解しています。

当店に約して言えば、水彩画向けの用途は立派に果たし、自らは劣化しにくい中性紙ですよ、といったことになります。

しかし、作品の完成という用途が終わった後の寿命まではカバーしきれません。 例えば、酸性紙化(黄変)が代表的です。この状態に至らしめる一次劣化要因として、湿度や温度の急激な変化、カビ発生、虫喰い、接触物からの劣化因子の移行があります。安全な紙(用途に適した素性の紙)であっても、保管環境が紙の寿命には深く関係していきます。

 


 さて、一次劣化要因を脇に置いて、そもそも紙の耐性や寿命に関係のある評価方法とは、どういったものでしょうか。

製紙メーカーでは、用途にあわせた独自の試験方法でこれを実施しています。

試験内容は各社独自の設定なので一般論になりますが、例えば数年から100年分に匹敵するような湿度・温度・ガス・光源・溶剤などの試験要素を、短期強制的に与え続け、その結果から劣化度を予測評価する方法です。そして試験庫内における試験資料紙の様相の違いで、大きく二つの方法があります。(以下の他にも用途適性をはかる試験があります)

 

ハンギング法:試験資料紙を試験庫内において吊り下げた状態で行う方法。

挿入法:試験資料紙を異なるpH値の紙の間に差し込んだ状態で行う方法。これは、異なるpH値の紙と長期間接触しても、自ら劣化しない紙、また接触する相手にも安全な紙が得られる方法です。

  いずれも用途に即した合理的な試験方法ですが、ハンギング法では安全や耐性が認められた紙であっても、これを挿入法で試験すると劣化促進されることもあります。

 実生活における紙の存在状態は、常に他の紙であったり異なる素材と接しています。そして、接する素材が内含するpHの影響を受けることが分かっていますので、特に保存を優先させる用途紙には注意が必要になります。うっかり素性の不確かな包材で作品を支持すると、黄変(酸性紙化)劣化が促進される理由です。

 

保管環境に関する評価試験

PAT(Photographic Activity Test):写真活性度試験・・・米国の公的機関による試験で、長期間におよび銀塩写真、印画紙を劣化させない包材の安全性を評価する3つの試験です。(ほかにもANCIといった試験もあります)

 

銀塩写真や印画紙は、接触している包材が放つpHの影響を、ほかのどの素材より最も敏感に受けやすい素材です。この敏感な素材を被検体にして、悪影響を与えない安全な包材の特定に資する試験です。

したがって、このPAT試験に合格した包材紙は、そのまま、比較的にpH値に敏感ではない素材への包材用途にも安全な紙として逆説的に評価されます。

 当店に約しますと、PAT合格品の紙素材は、水彩紙、版画紙、画用紙、パステル紙、写真などの接触支持体や包材として、お客様に安心してお勧めできるということになります。 

 

 

当店の取り組み

 保存機能にすぐれた接触素材の環境を整えて、水彩紙や版画紙などハンギング法で評価された紙の長寿命化を目指しています。具体的には、お預かりした作品を接触劣化させないために、挿入法で安全が確認された素材紙やPAT試験に合格した素材紙を用いて、作品の酸性紙化を遅らせ、寿命をのばすことに努めています。

 たとえば、マットボードやスーパーバリアシート(ミューズ社)が代表例ですが、このほか作品止めにも中性テープや挿入法で確認されたピュア製品紙(国産)によるコーナーなど、考慮しながら用いています。

 エコノミータイプのマットボードであっても、変色(酸性紙化)ダメージへの対策を取っています。

お客様には、ひと言、「保存性に配慮してありますから」程度で、特に細々とは申し上げていませんが、こうしたところに注意を払っています。

 ご注意 カビや虫、光害などの劣化対策は別途必要です。

 


施工参考例

今回の作品は国外の古い紙資料のため、念のため可能な範囲で安全策を講じました。

オーナーの希望により、オリオン社のカラーコアマットREDの表面にネイビー(紺)を貼り合わせた、一般エコノミーマットの参考例です。窓抜きした様相は大変美しいラインが引き立つボードです。中性紙抄きの品質であり内的要因による劣化への不安は少ないですが、作品側の古い紙資料が持つpH値に長期間接触することに起因する染色変化と色移行、またメーカーを問わず、主に湿度といった外的な一次要因による劣化が予想されます。

(長期用途のボードにはピュアマット(国産)や海外製品を用いています。)

 

緩衝テープ 作品が接する窓の箇所にはラーソンジュール社のポリエステル基材の中性テープを緩衝材(①図)として貼ります。カラーコアボードと古い紙資料との接触バリアとして機能させます。

 

作品背面への配慮 作品の背面が全面接触する背面ボードは、接触劣化を起こさない素材(②図)を用いています。今回はブックマット形状をつくり、背面ボードにミューズ社のスーパーバリアシートを貼り合わせました。

 

繋ぎテープと作品止め カラーマットと背面マットボードの繋ぎには、強靱でしなやかなミューズ社の中性テープ(②③図)を用いています。作品止めはネーシェン社のテープを用いました。場合によっては、中性糊を工房内でつくりこれを用います。

①図 作品と接する窓枠にも緩衝用としてポリエステル基材テープを貼ります。

マットのセンター枠にテープの反射光が見えます。

ラーソンジュール社製品

②図 ブックマットの内側繋ぎに用いたミューズ社アーチストテープ。この後、スーパーバリアシートでカバーします。

③図 マットをつなぐ作業。粘着強度・引き裂き強度・柔軟性に優れたミューズ社アーチストテープは必須。

劣化不安が少なく、作品を安心してブックマットに挟める瞬間です。(紙資料画像はぼかしています)



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