テスト描画レビュー / 色材と画材紙との親和性 描画性について
テスト作品の性格は、主に説明しやすいデッサン画で、印象的または絵画的ではないことをお断りします。
私見:描き方や作風はそれにふさわしい紙を求め、 紙も、これにふさわしい描き方を待っている。
上達のためのワンポイント
イーゼルを用いるクセをつけましょう。
理想は三脚の垂直対面タイプですが、事情によりテーブル上での作業には、『モチツ モタレツ」(3サイズ)をおすすめします。
・視認性がよく、構図の誤差や明度差などの修正作業を軽減します。
・驚くほどの軽量さと簡易性、携帯性に配慮した製品です。
・座高にあわせて描画角度を調整できるため、前かがみ姿勢による肩こりや腰痛などの身体的ストレスも緩和します。
・詳細は「卓上イーゼル」ページをご参照のうえ、お役立て戴けますと幸いです。
テスト描画は、当店在庫の用紙を使い、来店ユーザーに対する販売の一助として描いたもので、「色材と画材紙」の親和性や修正度合いについてご紹介するものです。結論としてではなく、一評価としてご理解戴き、少しでも資することができれば幸いです。
作品は、 絵画教室コスモスデッサン会で紹介し、作品制作の工程を分解しながら皆さんと勉強しています。
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■掲載予定について
現在2種の作品を制作中です。パステルアート展10月12日(於:江戸川区船堀のタワーホール開催)向けの約20号、水彩向けの鉛筆画です。両方とも人物画で、皆様の参考になれば幸いです。 後日アップします。2020.9.30
化学サイズ材の水彩紙 ホワイトワトソン紙 F8カット判 透明水彩絵具(ホルベイン)
■にじみ止めの添加材には、化学製品とゼラチンが用いられています。
■ホワイトワトソン水彩紙のにじみ止め材は化学製品。紙の絵具離れが良いため、乾いた後であっても着色後の色を動かすことができ,色を抜いたり質感を出したりという表情表現が可能です。逆作用で色抜き時の筆が水を多く含んでいると、目標箇所の周辺まで色抜きしがちですので注意します。人物画の練習や油彩画のための研究にも有益な紙だと思います。
ちなみに、このサンプル画には白色の絵具は使っていません。
一方、絵具を捉える力に優れているゼラチンサイズ紙の場合、手早い紙上混色や色抜きが必要になります。放っておくとすっきりした彩色はできますが、淡泊な表現になりやすいです。
ワトソンはコットンを含有しており、ぼかしやにじみの効果も得られました。
デッサン水彩であり、決してドラマチックな仕上がりではありませんが、造形を楽しめる水彩紙としてもおすすめです。
下に制作過程を紹介しました。せっかくの制作物を修正するには勇気が必要ですが、実験です。プロの先生方も試行錯誤が凝縮されて、技術として会得されています。多くの実験が大切です。
■使った画材一式
消しゴム
筆:10号ラウンドセーブル 10号ナムラSKライン ナイロン平 ナムラPCセーブル 刷毛
鉛筆(下絵用)
ホルベイン透明水彩絵具
支持体:ホワイトワトソン300gを木製パネルに水張り
ゼラチンサイズの水彩紙 500×600㎜ 透明水彩絵具(ホルベイン)
■にじみ止めの添加材には、化学製品とゼラチンが用いられています。
■左のサンプル作品の水彩紙はゼラチン(糊)仕様ですが、ゼラチンが顔料を捉まえて紙と固着させるため、水の量によりますが、概ね着色2分後の脱色(色拭き)が難しくなります。絵具の定着速度が早いため、微修正で済ませられるよう、下絵の精度が求められます。
コットン100%紙の場合、この2分というタイミングで紙上混色を行うと素晴らしい効果を得られます。水まかせの成り行きにはなりますが、ドラマチックな作品造りには最適な紙です。
<上書きで仕上げる>
サンプル画は、数分経過して加色しましたが、仕上がりは淡白です。ニュアンスの表現に、さらに加色(重色)による作品化を目指した方がよい例です。次回はそのあたりを説明できるサンプル画をアップ予定です。
ちなみに、このサンプル画をもとにパステル画でも制作してあります。(後日アップ予定)
15分スケッチ
ホワイトワトソン300g/コットン高配合 150×200ミリの小サイズ 透明水彩絵具 使用した筆/ナムラ SKライン6号
楽しみながら、少し、遊びで描きました。(15分スケッチ)
こちらへ歩み寄る雰囲気と少し風を感じさせようというイメージのスケッチです。そのうちF15号程度に描く予定のひとつにしたいと思います。紙の大きさというか画面が小さいため、ナムラSKライン筆で描きました。穂先は水枯れしても遊ぶことがなくバラけない。水の含みも素晴らしい印象です。筆毛の腹から先端穂先にかけて、粘りのあるしなやかさがありました。粘りがないと、ペタッと塗られがちですが、この筆はそれを感じませんでした。今後の細やかな部分の彩色が楽しみです。
※ナムラの高品位筆「SKライン」の軸(柄)は長いので、使い勝手がよくなるように軸を短く切り落としました。画面に近接しながら描くとき、私には少し邪魔に感じたからです。道具は自分の使い方にマッチするよう加工していくことも心がけています。
人物画の彩色風景:モチツMサイズにパネルを乗せて作業しました。
確認しやすく、筆を置く角度もほどよい印象です。立ったり、座ったりしながら進めました。髪の毛の部分で圧力を加えた筆の走りにも、モチツは動かず、イメージ通りに描けました。
紙/ミューズタッチ2 F4スケッチブック鉛筆/HB バラ
原料はパルプ。紙質は緊縮したケント紙ほどではないけれどもやや堅い。そのため鉛筆の反発がほどよい。弾力とやわらかさのある画用紙 ほど塗り込みされず、濃淡の幅(明度差)を描き出しやすい。(同じ筆圧の場合、M画用紙や一般的な画用紙であればやや濃く、ケント紙であれば淡く着色される)
KMKケントと画用紙について 紙の柔かさ(筆跡濃度):画用紙>タッチ2水彩画用紙>ケント紙
原料 はともにパルプ。ケント紙は、紙質が緊縮した堅さを持つため、鉛筆の反発がありミューズタッチ2紙や画用紙ほど濃く着色されず、重ね塗りを行うこ とで、詳細な明度差を描き出せます。ケント紙による鉛筆デッサンは、形のあり方を細かく研究でき、彩色時にあいまいな処理に陥らない方法としておすすめしています。弾 力のある一般的な画用紙は、ケント紙やタッチ2水彩画用紙より柔らかいため、紙にめり込むように着色され、ゴムで消したあとに再び着色すると、めりこんだ 鉛筆線跡に鉛筆粉が入りにくく、白く浮いて見えることがあります。画用紙でのきれいな諧調表現では筆圧に注意が必要です。
画用紙は、ぼかし表現が用意に表現できるので、水彩やパステルでの彩色イメージをしやすい紙です。
紙 / ファブリアーノ・クラシコ5中目 コットン50%
水彩紙に逆光を課題にした木炭デッサン。コットンを含有した原料の紙だけあって、弾力があり目つぶれの不安はなかった。定着もよいが、色(粉)落ちしやすいので注意した。ゴムの処理も良い。
紙 / MBM木炭紙 130g
描画途中のものですが、この紙の木炭の発色はやはり良い。たてよこ斜めといった木炭線がきれいにのる。ゴムを引いても目つぶれしにくい。
高校時代、この紙一枚購入するのに隣の宮崎県まで行っていたことが懐かしいです。その時の小生には貴重な紙で、目つぶれした上にさらに木炭をのせて描いていました。
紙 ミューズ グレーワトソン190g 545×780㎜ コットン高配合 色材/ 木炭 透明水彩パステル 課題 / 透明と不透明の表現性
ワトソンの水彩適性をいかして背景に透明水彩を着色。その後木炭デッサン、続いてハードパステル、ソフトパステルの順に彩色。透明は遠方に不透明は手前に説明される。地色のグレー色が人物肌とよく響き合う。目つぶれしにくく、重ね塗りもほどよい紙質。
紙 ファブリアーノ・エキストラホワイト300g 中目 560×760コットン100% 絵具/透明水彩3色(赤 青 黄) 評価項目:調整力(脱色と加色性)
クセのない描きやすい紙のひとつ。顔を複数回の脱色と加色を繰り返した。淡白になりがちな一回塗りにくらべ、深いニュアンスが得られた。絵具の定着速度がやや遅いため、脱色と加色調整がうまく行えた。ついでに衣服のシワにボカシをテストしたが、きれいに表現できたのではないか。
紙/ ランプライト300g F6判
絵具/国産透明水彩
評価項目:加色と脱色による描画性 紙と絵具の定着性
ランプライト紙の調整力、言い換えれば脱色性または自在性を深堀りしてテストした。
油彩風の着色を実施して、空以外はほとんど複数回塗り替えたが、その面影はわずかに下地色として残るだけ。構図も大胆なまでに調整し、それまであったはずの樹木を消したり追加したり、小路の向きも変えられた。林の木や土手に繁茂する草は、手前・奥とも最後に脱色にて 描き出せた。このテスト作業に要した時間は約1ヶ月。定着の早い紙では不可能な描法が体験できた。
パステル画 「暮色」
凹凸のある印刷用紙 400×550㎜ ソフトパステル使用(レンブラント)
印刷用紙に描いたものですが、重ね塗りがうまくいきませんでした。凹凸はありますが、目つぶれがはやく表面にパステル粉が乗っていきません。パルプ紙の限界を感じました。空に均一さが得られず、ムラが生じてしまいました。
凹凸はわずかでも、コットンを含有した、あるいは100%コットン紙の弾力性は、凹面のくぼみがつぶれたようであっても、再び復元する原理で、凹面全体に重ね塗りができます。重ね塗りを多用する作品には、コットン系の紙が望ましいと思います。
コットン系の紙では、ワトソン239gやミクスドメディアではアルシュ紙をおすすめしています。
コットン紙以外では、MBM木炭紙130gもおすすめできます。
紙/ ランプライト300g 540×770
絵具/国産透明水彩
評価項目:加色と脱色による描画性
ラ ンプライト紙の調整力を再テストした。色数を用いず色の泣き出しやボカシ、紙面上の混色性を試みた。調整がしや すいという安心感があるため、思い切った着色にも不安はない。小さな樹々に隠れた幹も塗るだけぬった後で、丁寧に白抜きができた。
紙/MBM木炭紙 130g 500×600
色材/パステル(ハード ソフト) 評価項目:重色テスト 目つぶれ
パステルによる重ね塗りをテスト。構図は描く上での注意箇所も把握できていたので水彩と同じ。定着度は良好で目つぶれの心配はない。最初にハード、次にソフトで仕上げた。
2017年、第8回全日本パステルアート展の受賞作。
ありがとうございました。