テスト描画レビュー / 色材と画材紙との親和性 描画性の実験
私見:描き方や作風はそれにふさわしい紙を求め、 紙も、これにふさわしい描き方を待っている。
テスト描画は、当店在庫の用紙を使い、来店ユーザーに対する販売の一助として描いたもので、「色材と画材紙」の親和性や修正度合いについて実験したものです。結論としてではなく、一評価としてご理解戴き、少しでも資することができれば幸いです。
実験結果の細かなニュアンスは、絵画教室コスモスデッサン会で紹介し、作品制作の工程を分解しながら皆さんと勉強しています。
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上達のためのワンポイント
イーゼルを用いるクセをつけましょう。
理想は三脚の垂直対面タイプですが、水を多量に使う場合などテーブル作業には、『モチツ モタレツ」(3サイズ)をおすすめします。
・視認性がよく、構図の誤差や明度差などの修正作業を軽減します。
・彩色時の水のうごきを確認しながら作業できます。
・驚くほどの軽量さと簡易性、携帯性に配慮した製品です。
・座高にあわせて描画角度を調整できるため、前かがみ姿勢による肩こりや腰痛などの身体的ストレスも緩和します。
・詳細は「卓上イーゼル」ページをご参照のうえ、お役立て戴けますと幸いです。
■2022.9.28 醍醐芳晴先生による特別講習会を開催しました。
会のみなさんは、私が所蔵する醍醐先生の作品を事前に模写してもらい、描きながら見つけた課題を持ち寄って参加。醍醐先生にはかつての作品を前に、今一度デモンストレーション描写をお願いし、会の皆さんが抱えた課題解決につなげて戴きました。描画途中における様々な考え方や捉え方、着彩技術等々の説明を戴き、実り多い特別講習になりました。今後は、醍醐先生の図録やテキスト著作が活き活きとした動的な教材として活用できることと思います。皆さん真剣で納得の講習会でした。
■当日は、株式会社ミューズ企画課のスタッフも参加され、ホワイトワトソン紙の誕生の歴史などご紹介いただき、同水彩紙のメーカーとして品質上の責任感が伝わってきました。
■水彩紙について 醍醐先生の作風では、『ワトソンは水の広がり方における絵具の流動性を制御しやすく好ましい』(主旨)とのコメントもあり、コットンを高配合した混抄原料ならではの描画性を評価されていました。
モチツSを使用したグラデーション参考水彩画 (紙のNG品としての参考画でもあります)
モチツSを用いた参考水彩画で、映画のワンシーンを思い出しながら描いたものです。谷の上から底に至るまでの空間がグラデ描写の参考になれば幸いです。モチツはグラデーション描画に適度な角度を持ち、絵具水はゆっくりと下っていきます。描画途中の制御も三脚イーゼルと異なり、テーブル上で素早く対応できます。
使用材料 モチツS パネル張り水彩紙120×400(㎜)透明水彩絵具 (モチツにパネル450×600㎜を乗せて描きました)
ワイド画面ですが、Sサイズでもしっかり保持しています。
2024.6.13
全日本パステルアート連盟展(上野東京都美術館)への出品作品。
F40号大
使用した紙
ミューズ社「Doアートペーパー」
主に使用したパステル
ゴンドラソフト ヌーベルハード
今回は線画きを用いずに描きました。水彩画ニュアンスが出ないものかと挑戦。
柔らかいイメージで空間創出も試みました。
この紙 色鉛筆の適性も有した紙です。パステルでもねっとりと吸い付くように彩色でき、コットンのおかげで弾力もあることから、重ね塗りにも安心です。
パステル画 部分 55×80(㎝)
2023.6月23日〜30日 東京都美術館での全日本パステルアート展に出品。
今回の紙は、下絵の鉛筆デッサンと同じミューズ社Doアート紙を使用。
弾力のある柔らかい印象のある紙で、細目の紙肌。深い塗り込み具合が特長的だと感じました。
コシのある丈夫な紙質で、いわゆる画用紙より上級品。
パステルはヌーベルのカレーパステル(四角いタイプ)
一度下描きとして鉛筆デッサンを描いて、これを確認しながらパステル描画しました。
主題モチーフが持つニュアンスが、色が加わることで味わい深い印象になります。前方斜めの傾き具合や顔の表情など、鉛筆画をベースにして多少変化させてあります。
ほぼすべてヌーベルのハードパステルにて彩色。線描をおもに用いました。ほんのわずかにセヌリエのソフトパステルを乗せました。
髪の毛の濃度をもう少し抑えるべきだったかな、と思います。搬出後に調整します。
パステル画のための下絵鉛筆画 55×80(㎝)
今回の紙はミューズ社Doアート紙を使用しました。弾力のある柔らかい印象のある紙で、細目の紙肌。深い塗り込み具合が特長的だと感じました。消しゴムにも強く、コシのある丈夫な紙質で、いわゆる画用紙より上級品。
鉛筆は4B 6Bの2本とプラスチックゴム。
パステル画を前提とした筆致で描いてみました。教室の皆さんにも参考資料として紹介しました。
教室では、いきなり本作に入るのではなく、一度下描きとして鉛筆デッサンを描いて行くことをアドバイスしています。
理由は、本作作業中に必ずといっていいほど、行き詰まりがあるからです。遠近や彩度・色彩の強弱、濃淡表現、着色向きや体幹など、多岐の課題に直面します。
あらかじめ鉛筆デッサンの作業を通じて、こうした課題に事向き合うことで、本作作業中の課題をある程度理解できます。こうした訓練で、やがて本作品に向かう姿勢そのものに変化がうまれ、計画的な作業ができることを願っています。
また、下絵無しで本作品作業に行き詰まった方には、一旦その場を離れ、鉛筆で局所的にデッサンを取り、課題を理解してからもう一度本作品に向かってもらっています。
これからパステルにてもう一枚同じ紙を用いて描いて行きます。後日アップします。
パステル 人物デッサン作品例 F40号大
紙:ランプライト(ミューズ社)約790×1100㎜(4/6全判大)
パステル:ヌーベル・レンブラント・シュミンケ
2022年6月23日から30日まで開催された全日本パステルアート展への出品作品です。http://all-japan-pastel.info/schedule.html
(上野東京都美術館)
この紙は、重色しやすい弾力ある肌です。
荒さが残る作例ですが、日頃の教室で生徒さんにお伝えしている明度差、これが創り出す空間や立体感を意識してみました。これをお伝えできれば幸いです。
原画では紙の上部左右にパネル張り時の失敗シワがあります。描き初めの最中に思いついた技法があったので、パステル色がついた状態で水張りしました。覚悟の上の失敗でしたが、気にせずそのまま継続しました。
ワトソンに比べて粘り着くような定着性が感じられ、また中目肌が水彩のドライブラシ的な効果も演出してくれました。
パステルでなければ描けない何かを、水彩や油彩の表現を借りながら挑戦してみました。
搬出後、背景描画を加えていきたいと思います。
新しい国産水彩紙 Doアートペーパー(ドゥーアートペーパー)ミューズ社製品 209g コットン100%
400×650㎜ パネル張りにて作業 透明水彩絵具
『ナチュラルホワイトの紙色で、適度なザラつきのある紙肌と柔軟性を持った、コットン100%を原料とした水彩紙です。
風合いある表面は、発色と保水性に優れ、グラデーションやボカシなど、自然な水彩表現が可能です。水彩画や色鉛筆画、デッサン、コミック、イラストレーションなど、幅広い用途にご使用頂けます。』
出展:ミューズ社 ホームページ
教室用に風景画を描いてみました。
モチーフ:鹿児島県 霧島の秘境(自撮り画像)。
使った紙は上記のDoアートペーパー、これをカット判にして実験。最近は植物画(ボタニカルアート)用紙としても認知されてきました。
使用感は、素晴らしい紙でした.。
輸入水彩紙による水をたっぷり用いた作品をよく見かけますが、描画性におけるぼかし、重色やグラデーションは当たり前に可能で、発色性も素晴らしい紙でした。ただ、それだけだと単調に感じられるため、さらに、重加筆、耐水性(紙剥け)修正の限界を知るためにテストしたのが、今回の実験作品です。水平垂直にどこを隠して見ても、遠近を感じるように描いたつもりです。ドラマチックな印象はないですが、格闘の跡をご覧下さい。
使い慣れたホワイトワトソンとの比較で感じたことを記したいと思います。
色の定着性は申し分なく、乾いた後の重色でも色が動かない、色の泣き出しがない。絵の具をしっかり捕まえています。このためたとえば、下地グラデーションの上から、更にグラデーション重色を安心して引けるので、水面に深みを加えられました。
作品中間部の暗い水面は6回ほどたっぷり水を用いて重色したところですが、紙剥けは起こりません。紙剥けしたところに彩色するとき、異質な色味にならずにすみます。水の大きなストロークにはブラシやティッシュなどを用いましたが、強くやらなければ心配なさそうです。
実験描画は、いろいろな技法を用いています。教室は、現在コロナでお休みですが、再開したら作品を分解しながら、皆さんにと研究していきます。今後もさらに実験描画してみたいと思います。
素描デッサン 550×650㎜ K氏
ホワイトワトソン+鉛筆/6B
ご依頼をいただいていた素描作品です。
(写真からの描き起こし)
これをもとに、水彩にて着彩した作品を仕上げたいと思います。 後日アップ予定です。
ホワイトワトソン紙は、紙面に弾力があるので、鉛筆の筆圧に注意しました。力が入りすぎると、トーンをなぞっているうちに鉛筆ラインが溝になり、白く浮き出てくる心配があります。したがって、鉛筆も跡線が柔らかな6Bにて描きました。
ケント紙のような反発がある紙だと、鉛筆のノリがうまくいかず、濃さが出にくいのですが、ワトソンは少し粘り着くように塗られていきます。このため濃度調整しやすい紙です。
ピアノ鍵盤の数を教えて戴きました。
また、ピアノメーカーおよび調律師(士?)の方々のご苦労は、並々ならぬものがあることも学びました。
本当にすごい方々です。
宮城野早川堤(神奈川県)
MBM木炭紙130g パステル画 500×650
モノクロ基調で描いてみました。
人物
紙:ホワイトワトソン300g F30号パネル張り
使用パステル
下地用ハード:ヌーベル
上描用ソフト:セヌリエ・シュミンケ・レンブラント
東京都美術館にて開催された全日本パステルアート展(2021.6.23〜30)への出品作品2点です。
人物画
サインが入らない段階での仮撮影です。
一昨年、描画途中で台風19号の雨被害を受け、出品を断念し制作出来ずにいたものを描き直した作品です。
ざっくりとしたタッチで空間創出に挑戦してみました。
ワトソンの中目肌、わずかな凹凸が持つ弾力性にいつも感謝しています。これはコットン含有のおかげです。圧力を加えて重色するときよく分かります。目つぶれせずに起き上がり、パステル粉が凹凸面に伸びやかに塗られていきます。パステルにもお勧めできる紙です。
風景画
息子がくれた写真からの描き起こしです。箱根ちかくの堤、桜が美しく咲き誇っていましたが、彩色をがまんして、陽があたり「落ちる水」を描くことを念頭にモノクロで挑戦してみました。
MBM木炭紙の簀の目が、流れ落ちる水の向きをほどよく伝えてくれました。
ゼラチンサイズの水彩紙 500×600㎜ 透明水彩絵具(ホルベイン)
■にじみ止めの添加材には、化学製品とゼラチンが用いられています。
■左のサンプル作品の水彩紙はゼラチン(糊)仕様ですが、ゼラチンが顔料を捉まえて紙と固着させるため、水の量によりますが、概ね着色2分後の脱色(色拭き)が難しくなります。絵具の定着速度が早いため、微修正で済ませられるよう、下絵の精度が求められます。
コットン100%紙の場合、この2分というタイミングで紙上混色を行うと素晴らしい効果を得られます。水まかせの成り行きにはなりますが、ドラマチックな作品造りには最適な紙です。
<上書きで仕上げる>
サンプル画は、数分経過して加色しましたが、仕上がりは淡白です。ニュアンスの表現に、さらに加色(重色)による作品化を目指した方がよい例です。次回はそのあたりを説明できるサンプル画をアップ予定です。
ちなみに、このサンプル画をもとにパステル画でも制作してあります。(後日アップ予定)
15分スケッチ
ホワイトワトソン300g/コットン高配合 150×200ミリの小サイズ 透明水彩絵具 使用した筆/ナムラ SKライン6号
楽しみながら、少し、遊びで描きました。(15分スケッチ)
こちらへ歩み寄る雰囲気と少し風を感じさせようというイメージのスケッチです。そのうちF15号程度に描く予定のひとつにしたいと思います。紙の大きさというか画面が小さいため、ナムラSKライン筆で描きました。穂先は水枯れしても遊ぶことがなくバラけない。水の含みも素晴らしい印象です。筆毛の腹から先端穂先にかけて、粘りのあるしなやかさがありました。粘りがないと、ペタッと塗られがちですが、この筆はそれを感じませんでした。今後の細やかな部分の彩色が楽しみです。
※ナムラの高品位筆「SKライン」の軸(柄)は長いので、使い勝手がよくなるように軸を短く切り落としました。画面に近接しながら描くとき、私には少し邪魔に感じたからです。道具は自分の使い方にマッチするよう加工していくことも心がけています。
紙/ KMKケント♯200 A3判 鉛筆/HB
水彩の仕上がりを予定した下絵。お預かりした正面写真から描き起こしたデッサン。横からの写真がなかったので、起伏の具合は予想しました。人生を重ねてこられた方の顔の表情は若い方より豊かです。背後にある見えない生活まで描けるとよいのですが・・。人物画はごまかしがきかない分、デッサンの着彩画は描画訓練に最適ではないかと思います。
紙/ファブリアーノEXホワイト中目500×650
国産透明水彩絵具
実験作 鉛筆デッサンを見ながらガシガシと描き込み、本作イメージの模索を図りながら、紙・筆・絵具と水の動きを確かめました。たっぷりと水を使うため、パネル貼り時にうんと水を吸わせて貼りました。かなりハードにやりましたが、表面は強く毛羽立ちは皆無でした。
紙/ファブリアーノEXホワイト中目500×650
国産透明水彩絵具
本作 左の実験作で確認したことを念頭において、髪には少し印象的な要素も入れてみました。
着色後に微調整できる余裕時間がワトソンと同じで安心です。定着の早いアルシュでは微調整時間が短いので注意が必要。
紙/ KMKケント♯200 4切判 鉛筆/HB 鉢植え植物
後日、水彩画での掲載を予定しています。
人物画の彩色風景:モチツMサイズにパネルを乗せて作業しました。
確認しやすく、筆を置く角度もほどよい印象です。立ったり、座ったりしながら進めました。髪の毛の部分で圧力を加えた筆の走りにも、モチツは動かず、イメージ通りに描けました。
紙/ミューズタッチ2 F4スケッチブック鉛筆/HB バラ
原料はパルプ。紙質は緊縮したケント紙ほどではないけれどもやや堅い。そのため鉛筆の反発がほどよい。弾力とやわらかさのある画用紙 ほど塗り込みされず、濃淡の幅(明度差)を描き出しやすい。(同じ筆圧の場合、M画用紙や一般的な画用紙であればやや濃く、ケント紙であれば淡く着色される)
KMKケントと画用紙について 紙の柔かさ(筆跡濃度):画用紙>タッチ2水彩画用紙>ケント紙
原料 はともにパルプ。ケント紙は、紙質が緊縮した堅さを持つため、鉛筆の反発がありミューズタッチ2紙や画用紙ほど濃く着色されず、重ね塗りを行うこ とで、詳細な明度差を描き出せます。ケント紙による鉛筆デッサンは、形のあり方を細かく研究でき、彩色時にあいまいな処理に陥らない方法としておすすめしています。弾 力のある一般的な画用紙は、ケント紙やタッチ2水彩画用紙より柔らかいため、紙にめり込むように着色され、ゴムで消したあとに再び着色すると、めりこんだ 鉛筆線跡に鉛筆粉が入りにくく、白く浮いて見えることがあります。画用紙でのきれいな諧調表現では筆圧に注意が必要です。
画用紙は、ぼかし表現が用意に表現できるので、水彩やパステルでの彩色イメージをしやすい紙です。
紙/ KMKケント♯200 4切判 鉛筆/HB バラ
バラの花の水彩デッサン画の下絵として描いたもの。
ひとつずつの花を大きくデッサンし、形のあり方を学習し、水彩の着色時における計画をシミュレーションした。手を抜いてデッサンしたら彩色する時に行き詰まってしまうので注意した。
紙/ファブリアーノ・トラディショナルホワイト300g細目(中目)380×500 コットン100%
国産透明水彩絵具 2色 評価項目:水はじき
水はじき(紙表面に水を漂わせる度合い)がほどよく調整が容易の紙。ウオッシュ技法を分解して、花びらごとにあらかじめ水を含ませておき、半乾きの状態で彩色した。花びらのふくらみや丸み、遠近度の彩色を試みた。明度調整は絵具の溶き水の量で行い、淡い箇所は塗り残しや筆によるならしで調整を行った。
鉛筆デッサン
紙/ KMKケント♯250 545×725 鉛筆/HB 2B 4B
水彩紙 /ファブリアーノ・エキストラホワイト300g 細目 560×760 コットン100% 絵具/国産透明水彩絵具 コーヒー(経時変化で固形化したもの)
評価項目:調整力(脱色性)
初心ユーザーは一発塗りが難しいため、修正または調整しやすい紙選びは大切な要素。この紙は脱色による調整可能時間がアル シュ紙よりゆとりがあり、明度差などを彩色する上で丁寧に行えた。この調整時間はありがたいのではないか。
紙 / ファブリアーノ・クラシコ5中目 コットン50%
水彩紙に逆光を課題にした木炭デッサン。コットンを含有した原料の紙だけあって、弾力があり目つぶれの不安はなかった。定着もよいが、色(粉)落ちしやすいので注意した。ゴムの処理も良い。
紙 / MBM木炭紙 130g
描画途中のものですが、この紙の木炭の発色はやはり良い。たてよこ斜めといった木炭線がきれいにのる。ゴムを引いても目つぶれしにくい。
高校時代、この紙一枚購入するのに隣の宮崎県まで行っていたことが懐かしいです。その時の小生には貴重な紙で、目つぶれした上にさらに木炭をのせて描いていました。
紙 ミューズ グレーワトソン190g 545×780㎜ コットン高配合 色材/ 木炭 透明水彩パステル 課題 / 透明と不透明の表現性
ワトソンの水彩適性をいかして背景に透明水彩を着色。その後木炭デッサン、続いてハードパステル、ソフトパステルの順に彩色。透明は遠方に不透明は手前に説明される。地色のグレー色が人物肌とよく響き合う。目つぶれしにくく、重ね塗りもほどよい紙質。
紙 ファブリアーノ・エキストラホワイト300g 中目 560×760コットン100% 絵具/透明水彩3色(赤 青 黄) 評価項目:調整力(脱色と加色性)
クセのない描きやすい紙のひとつ。顔を複数回の脱色と加色を繰り返した。淡白になりがちな一回塗りにくらべ、深いニュアンスが得られた。絵具の定着速度がやや遅いため、脱色と加色調整がうまく行えた。ついでに衣服のシワにボカシをテストしたが、きれいに表現できたのではないか。
紙 /ランプライト300g 545×780コットン100% 国産透明水彩 輸入水彩絵具(伊)
評価項目:紙と絵具の定着
スカーフは輸入絵具、他は国産絵具で彩色。調整力(脱色性)にすぐれる紙に対する絵具の定着度を試した。髪は脱色状態のまま。脱色時にゴシゴシやると、紙肌が荒れるので、要注意。
紙 /アルシュ300g 細目560×760コットン100%
絵具/透明水彩 3色(赤 青 黄) 評価項目:調整力(脱色性)
ファ ブリアーノと同じ速度で調整しましたが、定着速度が早く、途中で製作をやめました。彩色後の脱色をもう少し早めるべきでした。全体的に淡白。しかし、この定着速度はさすがにこの紙らしい特長で、手早い重ね塗りも可能にします。色を一回で決められるプロが好む理由のひとつだと思われます。発色も良く、それなりの私
でも、何かうまく描けたように錯覚させるほどの実力紙。
青色スカーフの絵具はマイメリ社ベネチア水彩絵具。柄は、予め濃い色をのせ、乾いてから水で溶いた淡い同色をのせた。色の泣き出しがなく、きれいに描き出せた。この絵具には定着促進の添加剤があり、ランプライト紙のような自在性のある紙に早い定着を求めたい時に便利。(ドライヤー乾燥でもよいが)
無彩色スカーフの絵具は国産絵具 こちらは自由に色を動かせた。
紙 /ホワイトワトソン300g 350×450 コットン高配合 国産透明水彩絵具3色
スケッチ風にラフに描いてみました。本当に使いやすい紙だな、と毎度感じます。
コントラストが気になる時は、伝統色のナチュラルワトソンが描きやすいと思います。穏やかに着色されていくので、色の調子や階調を図るのが優しく感じます。
さらに広範囲のボカシを用いるのであれば、ファブリアーノなどコットン100%の水彩紙が良いです。
紙/ ランプライト300g F6判
絵具/国産透明水彩
評価項目:加色と脱色による描画性 紙と絵具の定着性
ランプライト紙の調整力、言い換えれば脱色性または自在性を深堀りしてテストした。
油彩風の着色を実施して、空以外はほとんど複数回塗り替えたが、その面影はわずかに下地色として残るだけ。構図も大胆なまでに調整し、それまであったはずの樹木を消したり追加したり、小路の向きも変えられた。林の木や土手に繁茂する草は、手前・奥とも最後に脱色にて 描き出せた。このテスト作業に要した時間は約1ヶ月。定着の早い紙では不可能な描法が体験できた。
パステル画 「暮色」
凹凸のある印刷用紙 400×550㎜ ソフトパステル使用(レンブラント)
印刷用紙に描いたものですが、重ね塗りがうまくいきませんでした。凹凸はありますが、目つぶれがはやく表面にパステル粉が乗っていきません。パルプ紙の限界を感じました。空に均一さが得られず、ムラが生じてしまいました。
凹凸はわずかでも、コットンを含有した、あるいは100%コットン紙の弾力性は、凹面のくぼみがつぶれたようであっても、再び復元する原理で、凹面全体に重ね塗りができます。重ね塗りを多用する作品には、コットン系の紙が望ましいと思います。
コットン系の紙では、ワトソン239gやミクスドメディアではアルシュ紙をおすすめしています。
コットン紙以外では、MBM木炭紙130gもおすすめできます。
紙/ ランプライト300g 540×770
絵具/国産透明水彩
評価項目:加色と脱色による描画性
ラ ンプライト紙の調整力を再テストした。色数を用いず色の泣き出しやボカシ、紙面上の混色性を試みた。調整がしや すいという安心感があるため、思い切った着色にも不安はない。小さな樹々に隠れた幹も塗るだけぬった後で、丁寧に白抜きができた。
紙/MBM木炭紙 130g 500×600
色材/パステル(ハード ソフト) 評価項目:重色テスト 目つぶれ
パステルによる重ね塗りをテスト。構図は描く上での注意箇所も把握できていたので水彩と同じ。定着度は良好で目つぶれの心配はない。最初にハード、次にソフトで仕上げた。
2017年、第8回全日本パステルアート展の受賞作。
ありがとうございました。