キャンバスのたるみ調整

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■クラックの心配が明らかにないときは、キャンバス裏面から精製水を噴霧して、繊維をのばします。その後あらかじめ用意しておいた拡張テンション治具を用いて自然乾燥させます。

 

今回の参考例は、長年にわたるF50号キャンバス生地の緩み対する調整をご紹介しています。

 

所見と計画

全体的にゆるみがあり、特に特定の箇所が他より沈んでいた生地です。また、生地は少し痩せてしまった印象で、最も沈み込んだ所を水平化目標にして、張りテンションが加わると、この箇所以外が余計にひっぱられ裂けてしまう畏れがあります。

従って、ある程度の緩みを残してあげる、または最も沈み込んだ箇所以外の水平レベルを目標にしました。

 

施工方法の企画

木枠の拡張による張りテンションを目指します。・・張り器が噛みくわえるだけのマージンがないこと、そして生地が痩せていて張り器の圧力で裂けてしまう畏れが考えられること、場所によってはピンホール孔が散見される箇所もあり、これを断念しました。

 

木枠種類

お預かりした油彩キャンバスの木枠は、よく見かける勘合式です。

木枠には、このほか見かけることが希になった、楔(くさび)タイプがあり、緩みと張りを自分で調節してあげることで、キャンバスの寿命を延ばすことができます。

 

作業天候について

張り作業は天候、特に湿度に注意します。

今回の作業は晴天日。目標はこれ以上縮まないこと、つまり緩む(たれる)ことはあっても縮まないことを念頭に置きました。仮に、雨天にパンと張ると、後日乾燥した日が訪れた時、さらにパンと縮もうとする力が働き、生地が裂けてしまう畏れが生じるからです。

 

晴れ渡って乾燥した日は、繊維質素材は縮んで締まっています。雨天など湿度の高い日は逆に緩んで伸びています。

カットキャンバスを張るには雨天。緩んで伸びた状態の生地をパンと張ってあげれば、後日の湿度がある日でも緩みは少なくて済みます。晴れた日にパンと張ったとしても、湿度にあたると前者より伸びて緩くなります。

 

ちなみに、当店でのキャンバス張り・水彩紙の水張り・和紙の裏打ちもこの生理現象を参考に行っています。


キャンバスのたるみと木枠跡 修正作業
キャンバスのたるみと木枠跡

状態確認

画像はモノクロ変換とフィルターがかけてあり、視認しにくいですが、中央に白い紙を置いて、点線ラインを4本引いてあります。このラインの延長線をたどると木枠の幅が確認できます。まさしくキャンバスの弛みにより、木枠に着いていた箇所がラインとして表面に浮いていました。

 

張りが加わることで、この木枠跡のラインはある程度解消されます。

 

幸いにして、地塗りも含めて彩色層が薄く、張りによるクラックを心配することがないこともポイントでした。

キャンバスのたるみ具合を調整
キャンバスのたるみ具合

レベル確認

キャンバスのタテヨコに紐を張り、木枠天場からの沈み具合を計測します。側辺から中央部を経てもう片方の側辺部まで調べます。

画像のタテヨコの紐が交差した箇所は、キャンバスのほぼ中央です。

 

天井からの照明で紐の陰ラインが確認できます。この陰と紐との空間が、緩み(たるみ)の程度を示しています。

たるみの深さ

中央部の沈み込みは10㎜強でした。

最も深い沈み込み(ゆるみ)箇所は12㎜ありましたが、この箇所を水平目標に設定すると、他が裂ける畏れがあります。

数値の上では2㎜程度の緩みを許容範囲として、10㎜の緩み解消の作業に臨みます。

キャンバスのたるみを調整
キャンバスのたるみ調整

水平化完了

木枠の拡張作業中に水平レベルを確認しているところです。

中央部あたりから周辺に至るまで、キャンバス面に紐が接触しており、ほぼ水平化がとれました。

照明の陰が出ていません。

 

木枠拡張のサイズは工房スペースの関係で120号あたりまでが作業範囲となります。ちょっと悔しいですが仕方ありません。

広い空間があれば3メートルまでがマックスです。

拡張にはハンマーは一切使わずに、天地左右均等に少しずつ拡張します。

楔の吸湿膨張と放湿縮みを併殺

木枠の拡張作業で水平レベルの確認が終わったら、楔をつくり長辺側に打ち込みました。

勘合する隙間幅が約3㎜。一般的には楔にも木が望ましいのですが、吸放湿による膨張と伸縮が予想されます。

今回はせっかく拡張したキャンバスの伸縮許容を限定できるよう、楔の材料にアルミ複合板を採用し、楔による伸縮を併殺できるようにしました。

 補強

目標レベルまで拡張したキャンバスの伸縮許容が限定できるよう、長手側の楔の材料にアルミ複合板を採用しました。

短辺側は楔ではなく金属プレートでビス固定しました。

 

金属プレートの下にある白いプレートはアルミ複合板です。

短辺の桟と長辺の桟との高さが初めから異なっており、両桟の高さ調整とズレを抑止できます。

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