紙の劣化について

紙の劣化については、さまざまなサイトで紹介されていますので、詳しくはそちらをご確認下さい。

ここでは額装や描画における現実的な課題にどのように対処しているのか、といった当店の取り組みについてご案内します。内容については、今後追加していきますので、次下がすべてというわけではありません。

尚、対策品の販売も承りますのでメールにてお知らせ下さい。


フォクシング(カビ)の発生と予防



フォクシング(カビ)参考例①

ボタニカル水彩画 紙:アルシュ

ボタニカル カビ(フォクシング)例
ボタニカル カビ(フォクシング)例

フォクシング(カビ)参考例②

版画  紙:ベランアルシュ

ベランアルシュ カビ(フォクシング)例
ベランアルシュ カビ(フォクシング)例

フォクシング(カビ)参考例③

版画  紙:ベランアルシュ


参考例①は作家の方からの持ち込み例です。素朴に、何故こうなるのかというご質問でした。参考例②③は、あるデパートにて購入したシルク作品とのことでした。『しばらく自宅にて展示していたが、オモテ面のマットボードに少しシミが出て気になるので、交換してほしい』とのご依頼でした。裏板をはずして確認したのが②③の画像です。マットボードはもちろん、作品にまで及んでいたフォクシング。


課題:額装品のユーザー自身によるメンテナンス

②③の持ち込まれた額縁は、裏板が専用の固定金具で打ち込まれ、テープにて目張りしていました。ユーザーには容易に手を出せないほど、額装技術の完璧さとして受け止められているのではないかと、少し危惧しています。保存仕様の額装か否かは、裏板を開けるまで実は分からないといって良いでしょう。私の個人的なコレクションは全て裏板を外し、作品と接触している素材まで調べ上げます。目張りテープの効果は一長一短あり一概に結論づけはできません。虫害には効果的ですが、メンテナンスを難しくさせます。よほど理想的な構成材料を用いないと②③の通りとなります。当店では、ここに注力しており、どちらかというと、外見より内部構成品に重きをおいたコスト感覚で仕事をさせて戴いています。作品の劣化予防も機能として有する額縁が、悲劇的な劣化要因を呼び寄せているという矛盾を、お伝えしています。


課題と現状:スケッチブックの状態や額装後にカビの発症が見られた。額縁の裏板アクが移行して黄変し、フォクシングが多数発生

予想される原因:保管場所の湿度高 空気停滞(非還流) ガスストーブ燃焼  室内と外気温度の差(※) 吸湿素材との接触

当店の取り組み:遮熱保存箱 アーカイバル保存箱 裏板素材の選択 作品に安全な接触素材を提案 防カビ液や中和液の粉霧 殺菌液塗布  ブックマット装填  スーパーバリアシート仕様 など


保管場所の湿度高 室内と外気温度の差(※)への対策

当店では、高遮熱シートを用いた「遮熱常温箱」および区体や特定の部屋に対しての遮熱施工の工事を行っています。保存保管に最適な環境温度と湿度をご提供しています。外気温との差は結露を生じさせ、その湿度は取り付きやすい紙に吸収されやすく、結果的にカビの温床になります。また紙は、繰り返される吸放湿で伸縮劣化による酸性紙化に向かいます。

 湿度の高い居室やアトリエ、夏冬における室内温度の対策に遮熱環境のお手伝いを致します。


裏板素材について・・・特殊スチレンボードと中性アーカイバルボード (裏板の交換を承ります。お問い合わせ下さい。)

当店では額縁の裏板素材として2種類を扱っています。一つは全く新しい特殊スチレンボードで、アルミ箔で両面から中間カバーされており、温冷熱を遮熱して 断熱効果を持ちます。窓のある壁面では外気温と室内温度の差で結露(湿度)が生じます。従来の木製裏板の場合、より乾いた額縁内部の本紙作品にまで湿度侵 入が及び、カビ発症の因となっています。さらには、木部が加水分解され酸化物質のアクが作品に及ぶことも散見されています。こうした作品劣化のリスクを回 避できる素材です。

 もう一つは、中性アーカイバルボード(中性の硬質ダンボール)です。結露の心配のない一般的な空間におすすめしています。素材の空気層が断熱効果を有していますが、急激な温度変化に追従しやすい傾向があります。


製紙工場における抄造段階で添加される防カビ剤の効果は、概ね1年ぐらいと説明されています。しかしユーザーの中には、『中性紙だから変色しない、劣化しない、カビも発生しない』といった思い込みをされている方もあります。紙は呼吸しながら伸縮するデリケートな生きた素材だと認識しています。対策では「空気中の何を吸わせながら伸縮させた」か、を逆説的に考慮しています。