アバ・ザ・ムービー 巨大ポスター1,010㎜×2,030㎜ 額装例
1977年「アバ・ザ・ムービー」の稀少巨大ポスター(米国製) ポスター寸法1,010×2,030㎜ 額縁略サイズ1,100×2,150㎜
オーナーは『かつてのあの日、日比谷からこれを持参して帰宅してきました』とのエピソードを語ってくださるファンのお一人。
近年再結成されたのを機に改めて彼の日の感動が呼び起こされ、稀少ポスターの保管環境を整えたいというご要望。
大きさからくる重量が予想され、簡易的でありながら可能な限りの軽量化と安全対策に配慮した構成素材で製作。
ポスターの状態 1
45年前のポスター、画像にあるシワ折れや白色文字部の黄ばみが見て取れました。全体にタテとヨコに深い折りクセが及んでいました。
また、ほんのわずかの孔空きや擦れも見受けられました。
ポスターの状態 2
上下二分割のポスターです。
現在ではインクジェットプリントで長尺サイズは可能ですが、45年前の当時では、印刷機械や印刷紙の限度越えの大きさでした。
こうした貴重なポスターに触れることができ、感慨も湧きます。
繋ぎにはテープが使われていましたが、幸いにもアーカイバル対応のネーシェン社製品のようです。まったく劣化していません。
米国では保存についてのケアが当時から進んでいました。テープ作業された当時のスタッフに感謝です。
インデックス
ポスター裏面に手描きされたインデックス。
この後の裏打ち作業で隠蔽されるため、予め撮影しておいたものを、後日オーナー様にお届け。
裏打ち 1
シワ折れ 孔あき状態だったので、予定を追加して裏打ちを行うことにしました。
軽く霧吹きしてシワ折れの落ち着き度合いを観察 。
印刷用紙がアート紙なので、紙表面の白土が吸湿を妨げています。
折れが深くて、なかなか落ち着きません。
折れが深いところは、裏打ち後に折れ戻しが予想されるため、補強裏打ちも考慮するか否かも含めて観察。
裏打ち 2
土台板の上に厚地の和紙を捨て置きして、霧吹き。
折れシワの深さが確認できます。
水がしみ込むにしたがって、繊維にしみつき劣化して酸化した黄色の汚れが浮いてきます。これをきれいに除去。
完成後は白色文字の黄ばみが消えて、白さが戻ることと思います。
裏打ち 3
裏打ち作業中。
裏打ちに用いる紙は楮紙、糊は美術館の修復で用いられる素材で、中性で原状回復が極めて容易な素材を使用。
上下二分割のポスターですが、それぞれ裏打ちし、完成後に位置合わせしてカバー貼りにします。これは繋ぎ部分のキャラクター図が微妙な間合いであるためです。
仮張り
裏打ち後の仮張り。シワが解消され亀裂箇所も補強されました。乾けばピンと張りが出てきます。
白色文字に白さも戻りました。
完成
店舗に移動したものです。店舗天井高さが2,700㎜ですが、うっかりすると突き当てそうです。
額縁は天地と左右を色違いのもので構成して、モダンな雰囲気を演出。強度を持たせるためフレッチャー4000によるサムネイル固定、合わせてビスにて補強を加えてあります。
裏板には劣化要因となる木製品は使いません。両面がpH7.0の耐水素材です。またこの板面が揺れたり、反ったりしないように、アルミアングルで抑えて棹側で固定。
納品
こうした大型額で重量のある場合は、各々を分解して持ち込み、現場で組み上げを行いますが、今回は完成状態。
玄関から入り目的場所の2階まで進もうと試みましたが、どうも無理でこれを断念。次善策として、オーナー様にもお手伝い戴き中庭から吊り上げて目的場所へ運び込みました。
天井まであとわずか数センチで、堂々たる大きさで迫力ものです。
帰りに戴いた冷たい飲料水、盛夏の作業にとってこの上ない涼でした。さらにアバの1997年発売のCD(未開封)も頂戴しました。
帰宅後、当時の音に近いと思われる70年代オーディオAU9500+JBL(3ウエイ)で楽しんでます。
I've been wating for you
オーナー様には想い出に残る出会いとご依頼を大変有り難うございました。
フレームではいろいろな設備機器を用いて、従来技術以外の手法も積極的に採用しています。
限りもありますが、可能な範囲で額装などを手がけています。新たなご依頼がどういうものか、悩むのも楽しい仕事です。